香川大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科

咽喉頭・嚥下領域

研究内容

咽喉頭・嚥下領域の臨床研究

誤嚥防止手術の術式選択に関する研究

近年増加している嚥下障害患者に対する手術加療に対し、術後の嚥下機能を術前に予測するための一要素として嚥下圧検査法の有用性を検討し、術式選択のエビデンスを確立することを目的としています。

現代の高齢化社会にあって、脳血管障害や肺疾患、神経疾患などに罹患する患者は増加の一途をたどっており、それに伴って嚥下障害患者は増加しています。実際に誤嚥性肺炎は高齢者死因の第1位であり重症心身障害児においても死因の半数を占められます。このような嚥下障害患者に対し、肺炎や気道感染症の発症リスクを減らし、喀痰吸引回数の減少や気切孔の管理を容易にし、在宅への移行が可能性をもつ治療として、手術加療は注目されています。

しかし、嚥下障害に対する手術のうちの防止手術には、喉頭温存手術と喉頭全摘出術がありますが、各々の術式の選択に明確な基準はなく、術者の経験にゆだねられているのが現状です。我々の方針として、筋萎縮性側索硬化症に対しては喉頭全摘出術を第一選択としています。残した喉頭自体が嚥下の妨げとなると考えるためですが、喉頭が残存する喉頭温存手術と比較して、喉頭全摘出術の場合に嚥下がより容易となり長期経口摂取が可能となることの根拠となる定量的評価報告はありません。また、症例によっては喉頭全摘出術を施行しても、経口摂取が十分量とならず、経管栄養との併用となることを少なからず経験します。

そこで、喉頭全摘出術の症例において手術前後の嚥下圧を測定し、手術による食道入口部や咽頭の圧がどの程度変化するかを定量的に評価し、また他の喉頭温存術(喉頭気管分離術や気管食道吻合術)に関しても同様の評価を行うことで、術前に術後の嚥下機能を予測し、術式選択の基準を作成できる可能性に着目し研究をしています。